体外受精・胚移植について
1.体外受精-胚移植とは
1978年にイギリスで始められた画期的な不妊治療で,卵巣から卵子を注射針を用いて採取し(採卵)、体外で夫の精子と受精させ、受精を確認した卵(胚)を、カテーテルを用いて子宮腔に戻す(胚移植)ことにより妊娠を期待する方法です。
2.当院では次のようなかたに体外受精-胚移植を行っています
当院では子宮に高度の病変がなく、さらに以下の条件を満たす夫婦を体外受精-胚移植法の適応としています。
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(1)卵管性不妊
妻の両側卵管の器質的、機能的閉塞により従来の方法では妊娠不可能な夫婦
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(2)精子減少症
a: 夫の精子数が1000万/ml未満の夫婦
b: 夫の精子数が1000万~4000万/mlで、数回の配偶者間人工授精によっても妊娠しない夫婦
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(3)免疫性不妊
妻が抗精子抗体陽性の夫婦
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(4)未破裂黄体化卵胞
基礎体温は二相性になっているが、卵が卵巣外に排出していない場合
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(5)原因不明不妊
確固たる原因がなく、体外受精-胚移植法またはそれに準じた方法以外のあらゆる不妊治療が奏効せず、不妊期間が3年をこえる夫婦
3.体外受精の妊娠率・流産率・多胎妊娠率・子宮外妊娠率
体外受精-胚移植法の妊娠率は、年齢や適応により大きく異なります。日本産婦人科学会が行った統計調査によると、1990年における日本全国の集計で、妊娠率は胚移植あたり21% 、流産率は妊娠の31%、多胎(双子や三つ子)分娩率は分娩例の28%、子宮外妊娠も体外受精妊娠あたり5%といずれも通常妊娠よりも高い率となっています。
4.先天性奇形
体外受精-胚移植法により出生した児の奇形率は、通常妊娠の奇形率と変わりません。
5.体外受精-胚移植法を受けるまでの手続き
体外受精-胚移植法を希望される患者さんは担当医にその旨を申し出てください。担当医が患者さん夫婦の資料を検討した結果、体外受精-胚移植法の適応があると判断した場合は体外受精の待機リストに登録し、外来でその旨を患者さんにお伝えし順次治療を受けて頂くことになります。
6.当院の体外受精-胚移植法の特長
体外受精の方法は病院によって多少異なります。当院の体外受精-胚移植法は次のような特長を持っています。
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(1)卵巣刺激法
当院では原則としてブセレリンの経鼻スプレーとHMGの注射による卵巣刺激法を用いていますが、患者さんの状態や希望により自然周期やクロミッドによる 卵巣刺激を用いることもあります。
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(2)採卵
軽い静脈麻酔により経膣採卵を行っています。採卵時の痛みは殆ど感じない人が多いようです。
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(3)胚培養法
低酸素培養を採用しています。
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(4)胚移植法
原則として子宮頚管から子宮腔に胚を戻す通常の胚移植法を行っていますが、場合により子宮内膜埋め込み法を行うこともあります。
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(5)黄体期サポート
採卵翌日から黄体ホルモンを10日間服用していただき、胚移植時並びに胚移植の3日後と6日後にHCGの注射を追加します。
7.入院について
原則的に入院なしで外来ベースで施行しております。卵巣過剰刺激症候群等の合併症により入院が必要な場合があります。
8.当院で行われている先進医療は以下の通りです。
令和4年7月1日〜届出済
- ・二段階胚移植術
- ・子宮内膜刺激術(SEET)
- ・子宮内膜擦過術
- ・タイムラプス撮影法による受精卵・胚培養
令和4年10月1日〜届出済
- ・子宮内膜細菌叢検査2(フローラ)
- ・子宮内膜受容能検査2(ERPeak)